【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー

安心したのもつかの間、目の前が真っ白になっていく感覚。
体中の力が抜けて行って、胸の動悸が止まらない。  陽向を庇って?交通事故?

最悪な未来を想定してしまう。言葉を上手く発する事が出来なくなって、喉がやけにカラカラだった。

嘘だろう? 君は、この間まで元気に俺の隣で笑っていた。

「ちょっと樹!しっかりしてよッ。」

「社長!大丈夫ですか?」

「ちょっと一色早く、車出して!!
樹、取り合えず病院に行くわよ?!樹!樹ったら!」

夏村と一色の声がどこか遠くで聴こえている気がする。 俺だけまるで切り取られた別の世界に立っているような感覚。

向日葵が危篤だと病院から連絡が入った時も、この感覚を味わった気がする。

あの日、仕事の打ち合わせで外に出ていた俺は、その電話を直ぐに受け取る事が出来なかった。

病院に着いた時には、陽向の泣き叫ぶ声と、向日葵の両親と親父。 親父が泣きわめく陽向の今よりずっと小さかった体を抱きしめていた。


もうあんな想いはしたくない。 ひなた、君まで失いたくはない。
あんな後悔ばかりの日々はもう嫌だ。 君が必要なんだ。俺にも陽向にも――。

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