今日から不良王子と同居します。
直政くんは子どもの頃からうちに出入りしているから、ばあやだって彼の人柄を充分わかっている。


「うん、そうだよね」


それにしても、ばあやまで直政くんの気持ちに気が付いていたんだな。


知らなかったのは私だけだったのか。


いったい、どんなに鈍感なんだろう、私って。


「ばあやは、将来お嬢様が直政様とご結婚されて幸せなお姿を見るのが、唯一の楽しみでございますよ」


「ばあや……」


そんな風に言うばあやの手を取って、にっこりと笑いあった。


「ありがとう、ばあや。私が結婚する時も、結婚したあともずっと傍にいてね。
ずっとずっと。だから長生きしてね」


「まあまあ。お嬢様ったら」


ばあやは、ちょっと涙目になりながらも嬉しそうに笑みを返してくれた。


ごめんなさい、ばあや。


玲生くんのことで嘘をついてしまっているけど、私は決してばあややお父様の期待を裏切るつもりなんてないから。


そのことだけは約束するから。


だから今だけは、ばあやにも言えない秘密があることを許してね。

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