愛は惜しみなく与う⑦
吐き捨てるように話すサトル

私には、この空気が耐えられない。



「なんで苦しいんやと思う?気持ちを分かってくれへんから?好きにならへんから?あたしが……幸せそうに見えたから鬱陶しかった?」



サトルが私の前で見せる姿は、偽りだったのかもしれない。
それでも、私は一緒にいて笑って話したあの時間と、あの時に笑いかけてくれた顔は偽りだと思いたくはない。

サトルが何も感情のない人だと思いたくない。


「あんたも、あたしみたいに、なりたかった?」


お姉ちゃんはサトルにスッと手を伸ばした。



「羨ましかったんやろ?それで自分の未来にも期待したんやろ?」


「うるさい!!!触るな!!!」


パシンと乾いた音が鳴る
サトルは伸びてくるお姉ちゃんの手を叩いた

全てを拒否するかのように



「誰も教えてくれへんかったんやな。感情の殺し方だけ、覚えてしまったんやな」


「やめてくれよ!来るな…」


そこに居るのは、ただの幼い子供だ



「あたしに、触れてみ」

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