愛は惜しみなく与う⑦
ワンピースの裾をギュッと握り、妹は泉を睨むように見た



「お母様にお姉ちゃんを知って欲しい。今更だし、遅いけど……お姉ちゃんは私の憧れだから。お姉ちゃんがいなきゃ私は…死んでたから。お姉ちゃんだけが、ずっと優しくしてくれてたから。こんな私でも、大事だって…言ってくれたから。

私はお母様が、お姉ちゃんという人を勘違いしたままは嫌」


絶対譲るもんか

そんな勢いで話した



「東堂家のことよ。私が背負っていくのは当たり前。この財閥が消えてしまいそうな時に助けてくれたお姉ちゃんを…蔑ろにはしない。ここを守ってくれたお姉ちゃんのことは、お母様も知るべきだわ。そして、私と一緒に背負います」


驚いた

違う人に見える

そして何より、力強く話すときは



杏にとても似ている



「お母様には真実を話します。私の愚かさも、姉の強さも、全て」


泉を説得しなきゃダメだと分かったのか、泉との距離を詰めて、2人は視線を合わせた



「母親を説得できなきゃどうする?壊れるぞ、一瞬で。杏の守った場所も、お前が生きていく場所も」
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