冬の花
「こんなに堂々と私を部屋に連れ込んで、
大丈夫なんですか?」

鳴海千歳が宿泊する部屋に入る直前、近くの部屋に宿泊していたスタッフの一人と出くわしてしまった。

なので仕方なく、私と鳴海千歳は軽くその人に頭を下げた。

「今さら?俺と君との関係は、
業界中の公認だからね」

そう言われ、私は過去この人に抱かれて主演を貰ったと、
誰もが思っている事を思い出した。

「それにしても、雪凄いね。
K県は、いつもこんな感じ?
君、K県出身なんでしょ?」

そう訊かれ、
頭の中にぶぁっと、昔の事が蘇る。

朝、窓から見る雪景色。

その雪道を歩いて、バス停へ行き高校へと通う。

その道中、交番の前に居る阿部さんの姿…。

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