冬の花
「早くしろっ!」


父親は缶ビールを掴み、私に投げつけた。


それは私に当たり、畳の上に落ちる。


もうそれほど残っていなかったのか、
さほど溢れる事は無かった。


私は、その缶ビールを拾う。


「おい、飯作る前に、ビール買って来い!」


「えっ」


顔を上げた私に父親は近付き、
私の頬を平手で殴った。


私はバランスを崩して、畳に倒れ込む。


拾ったばかりの缶ビールも、私の手から離れてまた転がった。


「早く行けっ!」

そう言って、私の体を父親は蹴った。


私は踞り、その時が過ぎるのを待つ。


私が父親に逆らえないのは、暴力が怖いから。


もしかしたら、お母さんもそうだったのかもしれない。


だから、こんな男の言いなりに。



私と同じように、言いなりに。






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