冬の花
それからは、呆気ない程順調で満たされた4年間だった。


父親が失踪して数日後、何処で聞き付けたのか、
母親の従姉妹だと言う、岡田裕子(おかだゆうこ)と言う女性が私を引き取りたいと、現れた。


「あなたの母親の綾子ちゃんとは、
昔本当に仲良くて姉妹みたいで。
だから、あかりちゃんも私にとっては可愛い姪っ子みたいなものだから」

そう言って、色々と話し出した裕子さん。


裕子さんには私は小さな頃何度か会っているらしいが、
覚えが無かった。


彼女は、私の母の葬式にさえ来て居なかったから。


私は目の前に居るこの女性を怪しみながらも、
何かを期待するように話に耳を向ける。


裕子さんは、有名な会社の部長で、収入も貯金もあり、
今まで一度も結婚もせず子供も居ない。


都会の大きなタワーマンションの3LDKの部屋で一人で暮らしており、
お金も部屋も色々と余裕があるからぜひ私に来て欲しいと。


勿論、学費も出すし、
父親が見付かりまた父親と暮らしたいなら、また父親の元に戻っていいからと。


その間、私の住んでいるボロ家の家賃も払ってくれると。



私にとって、条件の良すぎるその申し出に、
騙されているんじゃないか?と疑いながらも、お願いします、と頷いていた。


騙されていても、構わない。


とにかく、私はこの場所から抜け出したいから。
< 53 / 170 >

この作品をシェア

pagetop