冬の花
「今回、君にも少しマイナスを負って貰おうって。
内々で決まってた三浦実奈を主演から降ろすでしょ?
その三浦実奈にそれなりの謝罪や見返りもそうだけど、
プライドを傷付けない為にも、ちょっと」


鳴海千歳の話はこうだった。


私が体を使い、鳴海千歳から強引に主演を貰ったのだと。


私は主役を実力ではなく、体を使い汚い手で手に入れたのだと。

それならば、三浦実奈も実力で私に役を取られたわけではないと、
多少は納得してくれると。


「三浦実奈には見返りとして、
今回のドラマで、殺し屋の男の昔の恋人的な役で、ちょっとした回想シーンを足すのと、
そのちょっとした役でクレジットに(特別出演)を付けるのと、それなりにギャラは弾むからって事で、三浦実奈の事務所には納得して貰った。
あ、後、夏の単発ドラマの出演と。
それは橋田さんの提案で、俺はノータッチだけど」


「じゃあ、鳴海さんだけではなく、
橋田さんにも今回の事で色々と尽力して貰ったんですね」


「ま、橋田さんも君の演技を評価していたから、
俺が主役を君にしたいって伝えた時も、
ちょっと困ってたけど、すぐに折れてくれたよ」


「そうなんですね…」


その声が弱々しかったからか、
鳴海千歳は首を傾げてこちらを見ている。


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