冬の花


「今回の事は本当にすみませんでした!」

CM撮影の為に訪れた某スタジオの廊下で、
私を待ち伏せするように保田美憂が立っていた。

突然頭を下げられて、
私は驚いて半歩下がってしまう。

木元さんに連れられ、早朝な事もあり、まだ半分寝たような状態だったので、
一瞬何が起こったのか分からなかった。

私に対して謝っている人物が、
保田美憂だと気付いたのも、
下げた頭を上げた時。

生で初めて見る保田美憂は、本当に可愛かったけど、
最近あのスキャンダルでか疲れきった顔をしていた。

「岡田さんに謝りに来るのが遅くなってすみません。
事務所の方に聞いたら、今日は朝からこちらでCM撮影だと聞いて。
失礼だと分かっていたのですが、
どうしても一言岡田さんに謝りたくて。
今回の事は、本当に私のせいで申し訳ありませんでした」

保田美憂は、もう一度私に深く頭を下げた。

「あ、あの、頭上げて下さい。
ドラマの話が無くなった事はもう私は気にしてませんから。
ね、木元さん?」

突然の事で困って、木元さんに助けを求めた。

「そうよ。
この業界に居たら、こんな事も珍しくないから」

そう木元さんはフォローするが、
今回のドラマの話が無くなって私よりもとても落ち込んでいたし、
今回のドラマのPと不倫をしていて原因を作った保田美憂にかなりご立腹だった。

だけど、目の前に保田美憂が現れて、
窶れて、泣き腫らしたような目を見たら、
責める気なんて起こらないだろうな。

あれだけ嫌っていた保田美憂なのに、
私でさえそんな嫌いな気持ちが無くなり、
彼女を助けてあげたいとすら思った。

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