冬の花
もう、その大罪を忘れてしまっていいのではないか、
と思っていたけど、昔の私を知る彼が現れてそれは無理なのだと思い知った。

梅雨空の続く、6月中旬。

「久しぶりだな、あかり」

事務所のオフィス。


今週一杯で寿退社をする私のマネージャーの木元さんの代わりとなる、
新しいマネージャーが紹介された。

「聞くと、北川君はあかりの幼なじみだそうじゃないか。
まだ入ったばかりで専属での経験はないけど優秀だし、
彼にあかりの担当をして貰おうと思っている。
顔見知りならお互い気を使わないだろうし」

そう笑顔で話している社長の言葉は、途中からもう殆ど耳に入って来なかった。

動揺を隠す事で精一杯の私に、
彼、北川佑樹は笑いかけて来る。

笑っているのに、恐怖を感じてしまう。

なんだろう…。

この嫌な予感は…。

佑樹が私の前に現れたのは、偶然?

何か目的があるのだろうか?

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