結婚はあきらめ養子を迎えたら、「お義母様大好き」と溺愛されています
 なぁんて思いながら日々を過ごしていると、ある日父上からお呼び出しがかかった。

「すまん、決して金でお前を手放すわけじゃないんだ……」
「ごめんなさい、どうしても、断ることができなかったの……」
 部屋に入ると両親が申し訳なさそうに僕に頭を下げている。
 き、き、き、来たー!
 この様子なら、相手は綺麗なお嬢さんってわけじゃなさそうだ。
 断り切れないと分かっていて、強引に話を進めるってことは、かなり結婚相手に困っている人間だろう。
「おいくつの方ですか?」
 若くありませんように、若くありませんように。
「うむ、30歳だ……」
 喜びのあまり昇天しそうになった。
 12歳も年上。27、8ならまぁ許容すべきかと思っていた僕に、神様は微笑んだ!
 性格は良くないんだろうな。でも、僕に骨抜きになってくれれば問題ない。年上女性の落とし方はいろいろと研究した。
 見た目も、いわゆる美人からは遠いんだろうな。稀に可愛くて綺麗だとちやほやされすぎて行き遅れるパターンもあるから美人の可能性は捨てきれないが。
 それよりも順調に年を重ねややふっくらとしてきて、すいつきそうな肌を持った笑うと目じりにシワが浮かぶ女性がいい。にこりともしない美人よりも、笑顔でできる目じりのシワにぞくぞくするんだから。
 はぁー。早く会いたい。僕の嫁!
 12歳年上のおばさん妻。いや、おばさんなんて呼ぶのは失礼だな。熟女妻。んー、これもなんか違うな。
「――という経緯なのだが、アル、聞いておるか?」
 ハッと、父の声に正気に戻る。
「いえ、申し訳ありません聞いていませんでした」
 と、素直に答えると母上がハンカチで両目を抑えた。
「ううう、やはりショックよね、ショックで話を聞けないほど……」
 いや、嬉しすぎて意識が飛んでいただけです。
「すまない、本当に……」
 父上もうなだれている。
 それから数日はふたりを慰めるのが大変だった。兄たちも済まない変わってやりたいが……、先方がお前をと望んでいると申し訳なさそうな顔をしていた。
 誰が、変わってやるもんか!
 あー、よかった。兄弟一イケメンで。兄たちもそれなりにいい男だけれど、噂になるほどではない。
 てなわけで。
 男が、婿入りするときってなんていうんだろうね?女性の場合輿入れとかいうけど。
 話を聞いてから10日後。
< 2 / 90 >

この作品をシェア

pagetop