結婚はあきらめ養子を迎えたら、「お義母様大好き」と溺愛されています
「ハンナーっ!ハンナ!教えて頂戴!行ってらっしゃい行ってきますで、ぎゅっと抱きしめるようなことはある?」
 何と言っても、私が知っている親子の関係と言えば、お父様と私とのことだけ。
 ……お母様は記憶にない。母と子のことはハンナ先生に聞くのが一番よね。
「ええ、当たり前じゃないですか」
 当たり前だった。
 そうか、ビックリして一瞬体が固まってしまったんだけれど、アルバートは気が付いたかな?
 気が付くよね。騎士科とかなら、人の動きとかよく観察できるだろうから……。
 ……ごめん。せっかく親子として、家族になるためにアルバート君が歩み寄ってくれたっていうのに。
 私が、身構えてしまったなんて……。
 明日は、もう、遠慮して……朝の当たり前のお出かけの挨拶をしてくれないかもしれない。
「そんなのだめだわ」
 突然大声を出した私に、ハンナが口を開く。
「ダメじゃないですよ。小さい頃はもちろん、しょっちゅう抱っこ抱っこいってましたから当たり前ですけれど、大きくなっても、出かけるときには無事に帰って来られるかお互いに不安ですから。大丈夫、大丈夫、って無事を祈りながら行ってらっしゃいって。大切なことです」
 ハンナが、拳を握りしめて主張する。
 そ、そう、それほど大事なことなの。
 う、ううう。知らなかったとはいえ。
 私は、なんてことを。
 もしかしたらアルバートは、私はアルバートを傷つけた上に、今日はとても不安な気持ちにさせてしまったのでは?
 重ね重ねなんて酷いことを……。
「……なんて、言いましたが。実際親になってみてはじめてわかったんですよ。子供の立場ならば、親と離れるときの不安感が薄くなる程度のことなんですけどね、親からしてみれば……。子供は本当に何をするか分からない生き物で。もしかしたら川に落っこちて溺れてしまうかもしれない、木に登って落っこちてしまうかもしれない、飛び出して馬車にひかれてしまうかもしれない……と、大人なら絶対にありえないことをしでかすんです」
 ハンナがはぁーっと大きくため息をついた。
「毎回、子供を送り出すときは、まるで戦場に子供を送り出すみたいな気持ちになるんです。無事に帰ってきてくれと。……だから、まぁ、抱きしめずにはいられないというか……」
 ハンナの言葉にガーンと頭を打たれたような気持ちになった。
 そうか。
< 47 / 90 >

この作品をシェア

pagetop