揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
こうなると、2人のアドバイザーの出番だ。


珍しく、達也とのデートがない週末。鈴は梨乃と怜奈に相次いで会った。


最初に会った梨乃は、話を一通り聞き終わると


「鈴、ここは1回、冷静にならないと。」


と諭すように切り出した。


「別に鈴の彼氏を悪く言うつもりはないけど、でも話を聞いている限り、鈴が一途に思い続ける価値がある人とは思えないんだよね、どうしても。」


「梨乃・・・。」


「気に触ったらごめん。真面目で誠実なのはわかるんだけど、でもなんか頼りないというかさ、優柔不断と言うかさ。」


「・・・。」


「鈴が運命の人って、思い込むのはわからないでもないし、悪い人ではないと思うよ。でも・・・劇的な再会に酔って、そのまま突っ走るのは絶対に良くない。きっと将来、後悔するよ。」


「・・・。」


「とにかく鈴は、他の人を見てみるべきだよ。別に鈴だから言ってるんじゃないし、相手がその彼氏さんだから言ってるんでもない。だって、世の中は広いんだよ。一途に一人の人を思うって、素敵だと思うし、私だって憧れないわけじゃないけど、でもそれってやっぱりもったいないと思うよ。」


「もったいない・・・。」


その言葉に違和感をもった鈴は


「じゃ、梨乃は私に浮気しろって言うの?」


と聞き返す。


「ううん、そんなこと言ってないよ。一度、距離を置いてみたらどうって言ってるんだよ。」


「達也さんと別れろってこと?そんなの絶対に嫌だよ。ケンカもしてないし、嫌いにもなってないのに、大好きな人となんで別れなくっちゃいけないの?」


語気鋭く言う鈴に


「でも鈴は、今の彼氏さんの態度に不満があるんでしょ?」


と梨乃は反問する。


「それは・・・そういう思いを抱くことだって、当然あるでしょ?人間、完璧な人なんか、一人もいないんだし。」


「その通り。でも鈴は今まで、思ってたんじゃない?『達也さんは完璧な、私の理想の人だ』って。」


そう切り返して来た梨乃の言葉に、鈴はハッとする。


「今までの鈴は、まさに恋は盲目状態。私は、それが危ないって思ってたの。」


「梨乃・・・。」


「大好きな人と結婚したいって思うのは、自然だと思う。私だってそう思うよ。でも結婚って、まぁやり直しが効かないわけじゃないけど、出来たらそんなことしたくないじゃない。その為にも、彼氏と1回距離を置くいい機会だと思うんだよ。結果、やっぱり達也さんがいいってなるなら、それはそれで全然ありじゃない。とにかく恋は盲目状態から突っ走るのは危険だよ、鈴。」


こうして、鈴は釈然とせず、でも梨乃の言葉を完全に否定することも出来ないまま、彼女と別れた。
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