眠れない夜をかぞえて
私の気分は晴れない。

一ノ瀬さんに拒絶されたような気分だ。

心配で戻りたくなるけど、それも余計なことだ。私は彼女じゃない。

待ち合わせの時間に余裕を持って来ることが出来た。

指定された店は、和食の店で、やっぱり個室があった。

まだ余裕があったのに、二人は先に来ていて、顔を付き合わせてパンフレットだろうか、広げていちゃいちゃ話をしていた。

「イチャイチャしちゃって」

「お疲れ様」

「姉ちゃん悪いな」

「お疲れ様、暑かった」

席に着くなり、コップの水を飲み干して、やっとほっとする。

「今日は式の話?」

「そうなの、結婚式を神前にするか、教会式にするか。リゾートにするか、海外ウエディングにするかで話がまとまらないのよ」

何処から声が出ているのか分からない程、瑞穂の声は上ずっていた。

幸せボケだ。そんなことは好きにすればいいのだが、誰かに話したいのだろう。

「瑞穂は何でも似合うよって言ったんだけど、迷っちゃってね」

我が弟ながらなんという浮かれよう。

「好きなのにすればいいのに。リゾートは家族を集めるのに大変そうだし、神前は厳かでいい。私は好き。リゾートは季節を選びそうで面倒だと思うわ。以上」

「もうちょっと味付けして言ってくれてもいいのに」

「だって、私が言った所で、結局は二人の好きなようにするんだから、自由にすればいいのに」
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