私の彼は上司で10歳年上で転勤が決まりました【完】
係長が課長になるんだから、これは栄転なのよね?

それは分かってる。

「おめでとう」って言わなくちゃいけないんだってことも。

でも、分かってることと、それを受け入れることは違う。

絶対、いや!

でも、やだ!と駄々をこねたところで、辞令がくつがえるわけじゃない。

「誓くん、私、会社辞める」

私は誓くんに言った。

真剣に、会社を辞めて、誓くんについて行こうと思ったから。

「七星……
 気持ちは分かるし、そこまで俺を思ってくれるのは嬉しいよ。でも、それはダメだ」

誓くんは厳しい顔で言う。

「なんで? このままじゃ、離れ離れだよ?
 そんなのやだよ」

私は、納得できなくて、誓くんに食ってかかる。

「七星は、まだ入社して1年しか経ってない。入社1年の中途半端なキャリアじゃ、次の仕事は簡単には見つからないし、そんなにすぐにやめるやつは、またすぐに辞めるって思われるだろ。そしたら、次の就職は難しくなる」

誓くんは、大人だ。

自分の感情を抑えて、正しい判断ができる。

でも、私が欲しいのは、正しい答えなんかじゃない。

「そんなの、アルバイトでもなんでもいいよ。
 誓くんのそばにいられるなら、それでいい」

だけど、誓くんは、静かに首を横に振る。

「七星は、ちゃんと仕事ができる。フリーターにするのは、もったいないよ。七星だって、就職活動を頑張ってうちに来たんだろ? そんな簡単に辞めるな」

そうだけど、そうなんだけど、私は誓くんの方が……

でも、誓くんは、認めてくれない。

だから、誓くんは、今日、1人で引っ越す。

私をおいて。

そんなの、絶対いやなのに。

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