【短】キミの髪を、ほどきたかった。

「そういうわけ、じゃないけど……」

「けど?」

「……っ。それより、ネクタイ……取られなかったんだ」

強引すぎる切り返しに、彼はプッと吹き出す。

「簡単にはあげないよ」

「へぇ……なんで?」

今度は、伝馬の真似をしてみた。
そうすれば、ペースを取り返せると思ったから。

……でも。

シュルッ―――……

「伝馬?」

そんな考えは甘かった。

目の前でネクタイを緩める彼の姿に、たじろぐ私。
シャツの隙間から覗いた鎖骨に、不覚にも胸が鳴る。

「次は、高松の番」

言いながら、彼は私のリボンに手を掛ける。

「ちょ、ちょっと……」

そして、抵抗する間もなく外された。
なにこの……慣れた手つき。

「何ふて腐れてんの?」

「そんなんじゃ……」

リボンを解かれたシャツの隙間に、風が入り込む。

うっ……冷た。

「高松」

「……なに?」

「これ」

肩をすくめている間に、首元が締め付けられる。

伝馬の、ネクタイ……?
視線を落として、私はやっと気が付いた。

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