地味OLの憂鬱~私は仕事に生きたいのに、三人からのアプローチにタジタジです!!

あきれ気味の玲奈の耳に、これまたいつもの泣き声が聞こえてくる。その人物は目にハンカチを当てながら、おいおいと泣いていた。

「なんと仲睦まじいお姿。あーーこの中に早くお嬢様が入る日をじーは、どんなに切望していることか……それを見ないことには、死ぬに死ねません」

朝から何を言っているのかわからない、このおじさんは一条家に長く務める執事長の加藤寅治(かとうとらじ)通称じーだ。

「それなのにお嬢様は、その様な格好をなさって、お嬢様の美しさの四分の一、いや百分の一も引き出されていない、この地味なお姿……。ううっ……嘆かわしい」

じーのこの発言も涙もいつものことで、これまた溜め息がもれる。

時間がないのでじーを無視して、紅茶を口に含みカップを置くと、じーの横から涼しい顔で玲奈のティーカップに紅茶を注いでくれる男性、それは玲奈専属の執事でじーの息子である加藤匠(かとうたくみ)だ。匠はしわのないスーツをパリッと着ていて、目元は切れ長の一重だが、けして細くはなく鼻筋も通っているイケメンだ。いつも優しい瞳で玲奈を見守っていてくれる。

「加藤ありがとう」

すっと美しい所作で頭を下げると後ろへ下がていく。

ティーカップを持ち再び紅茶を口へ運ぶと、紅茶の良い香りが鼻を抜け、少し強めの甘みが口に広がった。

毎朝の光景だが、さすがに今日は木曜日、休日まであと二日、朝からこのヘビーな状況にげんなりしていたため、甘味の強い紅茶が気分と疲労を上げてくれる気がした。

そんな玲奈の気持ちをすぐに察っしてくれる加藤は、本当によくできた執事だと思う。

時計に目を向けると針は七時を少し過ぎていた。玲奈はナプキンで口を拭うとゆっくり立ち上がった。

「すいません。私は先に仕事へ出かけます」

「まあ、毎朝早いのね。気をつけていってらっしゃい」

お父様といちゃラブしていたお母様が微笑んだ。

「行ってきます」

「「「「行ってらっしゃい」」」」

四人に声をかけられ玄関へと向かった。

玄関にある大きな鏡の前で全身のチェックをし外へ出ると、玄関前に車が用意され、すぐに出発できるようになっていた。

車に近づくと加藤が後部座席のドアお開け中へと促してくれる。加藤はすぐに後部座席のドアを閉めると、運転席に乗り込み車を出した。

家から会社まで約二十分、車の座席に体を預け、今日一日のスケジュールを手帳で確認し、頭の中で整理する。

今日は朝一番に会議がはいっていた。昨日用意した資料を会議室に運び、準備をしようと考えているうちに会社が見えてきた。

< 3 / 44 >

この作品をシェア

pagetop