ミライデザイン


思ってもみなかったコトバに、棗に合わせて歩いていた足が止まりかける。

そんな私をよろけそうなくらい、力強く引っ張って、自分の背中側へと連れていく棗。


バランスを崩した体を支えるために棗の背中をたよると、私の手首をつかんでいた棗の手がおりてきて、ぎゅぅっと、指先をからめとられる。


「可能性は0%以下なんで、諦めてください」


後ろからじゃ、棗の表情はちっともみえないけど、こんなにも繋がれた右手が痛いと感じるのは、はじめてのことだった。



「ホントウに、0%以下だと思ってる?」

「……以上には、させない」


「待ってください、橘社長!その言い方は、誤解を呼びます。棗も……ちがうから」



漂う不穏な空気。


橘社長が変に含みをもたせた言い方をするから、なんだか余計にややこしくなってる気がする。

棗の返しと合わせると、まるで、橘社長が私をすきみたいに聞こえてしまうから。


私はただ、棗との間にできた溝をうめたくて、橘社長に相談をして。橘社長も、つい何分か前までは、棗とのことを後押ししてくれていたのに。


急に、どうして?



「残念ながら、ちがくないよ。
伊吹くんが察してる通りだ。

沙祈くんが、私を選べば、望む関係をあげられる。……どちらがいいか、よく考えてみてほしい」



これ以上、ごちゃごちゃにしたくないよ。



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