ミライデザイン




『結婚にむけて、進みたい』



居酒屋で遭遇した、あの日。


何ヶ月も逃げ続けていた決断を、ようやくして。

意志を告げた私を人目を気にすることなく抱きしめた棗は、その日のうちにと、同棲を急いだ。




賃貸契約月の都合上、私が棗の家に拠点を移すことになって、諸々の手続きは時期を合わせて行うことになった。


数日間泊まれるくらいの荷物も合鍵も、すでにあったから、難しいとこは何ひとつなくて。





そんな風にはじまった生活は、なんだかんだで、もう1週間。




新しいカタチの毎日が動き出す前までは、色んなことが大きく変わってしまう気がしていたけど。


変わらない、仕事が忙しいという事実に、2人の時間はほとんど作れないまま。


今日のように、寝る前に少し、棗を感じられる時間がある程度のことで。



……正直、足りないという気持ちはある。



だけど同棲を始めていなければ、今以上に棗との時間はつくれていなかったわけで。

目にみえない何かに、必要以上に不安を膨らませていた可能性を考えれば、ささやかな幸せでも、十分なんだと思える。



まだ、結婚を具体的に考えることもできないけど。


それでも確かに、同棲をはじめてからの方がしあわせで、前に進んでる気がする。



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