ミライデザイン



1日で色んなことがあったからか、今、確かに存在している幸せが懐かしく思えて、私よりも大きくて骨張った手を、握り返したり撫でたりしながら、話しの続きを切り出してみる。



少し前に、棗が口を噤んだその先にある想いを、軽くできるかは分からないけど。


私は、私の想いを、伝えたいと思ったんだ。




指先が絡まる中で、ピクリと反応した棗の手を、少しだけ自分の方に寄せて、両手で包み込む。




「棗も知ってる通り、私って頑固だからさ。

環境とか状況が変わらない限り、きっと、自分の価値観を曲げられなかった。


…だから、踊らされてよかったのかなって。


手遅れになる前に、棗を失わずに済んで。

棗と家族になれる喜びに気づけてよかったって、今は思うよ」





そこまで伝えて、ベッドの上で体の向きを変えると、できるだけ正面から、棗の顔を捉える。


気づいて私をみつめる棗の表情は、まだ少し、雲っているような気がした。





その理由は、たぶん、私のせいで。


やっぱり、どうにかして、棗の中にあるモヤを取り除きたいと思う。




私がミライを信じられずにいるときも、私の分まで、いつだってブレずに、信じて魅せ続けてくれた棗だから。





「ずっと、頑固な私を待っててくれて。

私とのミライを信じ続けてくれて、ありがとうね、棗」





今度は私が伝えたい。
わかって欲しい。



長い間、棗からもらい続けてきた軸があったからこそ、ふたごの策略をきっかけに、臆病という殻を破って進むことができたんだって。




世界中で、私を突き動かす “なにか“ は、棗だけ。


ただ、ヒトリなんだって。





「棗じゃなかったら私、愛もミライも、こわくて堪らなかったと思う」




……臆病で、どうしようもない私に、愛を信じさせてくれてありがとうと。心から思うの。




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