青空が君を笑顔にするまで

暖かい春の風に乗った桜の花びらが私の頭上に沢山舞い降りてきた。


仁が寄り道をしないで自宅まで真っ直ぐ車を運転する。


自宅に着き、玄関のドアの前で仁に家の鍵を渡された。


「──はい、どうぞ。開けて」


……あれっ?仁、開けてくれないの?


私が鍵を差し込みドアを開けると。


猛ダッシュでこっちに向かって来る小さな生き物がいた。


──えっ、何?


私、家を間違えた!?


私達の前まで来ると前足と後ろ足を行儀良くちょこんと揃えて座り、私達を見上げ、ひと鳴きする。


まるで私達の帰りをずっと待っていましたという愛嬌のある表情。


小さなリボンが付いた赤い首輪がよく似合っていて凄く可愛い。


──えっ、どうしたの……、仁?


生後1か月半ぐらいの雌の三毛の小猫。


背中にはチャームポイントの黒い毛でハートマークがある。


「俺達の新しい家族、俺達の子供──」


仁が私の手を握り、私の顔を見つめる。


仁は、私が入院をしている間にこの小猫を家に連れてきたと言う。


退院後、私が元気になるようにって。


仁が優し過ぎて、私は小猫を抱っこしたまま涙を流した。

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