ずっと一緒に 〜後輩男子の奮闘記〜


 スーパーで食材を選ぶ須藤君は、とてもカッコ良くて、思わず見とれてしまう。
 私の買い物に付き合ってくれる時は、カゴを持ってついてきてくれるだけだけど、今日はカゴを持ってどんどん進んで行ってしまう。
 こうなったら、もうお任せだ。
 私は、後ろからちょこちょこついていって、自分の必要な物を入れていく。
 レジに並んだら、今日は自分が出します、と須藤君が言い張った。
 でも私の物も入ってるし、と言うと、まあまあ、とレジの向こうに押し出されてしまった。
「これ、入れといてください」
 と、買った物と一緒にサッカー台に押しやられ、須藤君は会計をしにレジに戻って行った。
 不承不承で買った物をバッグに入れていると、須藤君がやってくる。
「凄い顔ですね」
 苦笑している。
 多分、私の顔はふくれっ面だ。
「でも今日は譲りませんよ。初めて本田さんの家に行く記念日ですから」
 そう言って、またニッと笑った。
 カッコいいから。もう、勝てっこないから。
 悔しくなって、ちょっと意地悪を言ってみる。
「じゃあ、今からですます禁止ね」
「えっ?なんでそうなるんですか」
「タメ口にできなかったら、割り勘にして受け取ってもらうから」
「なんだそれ」
 まだ残っている商品をバッグに入れながら、ぶつぶつ言っている。
「じゃあ、俺も、一つお願いがありま……ある、んだけど」
「なに?」
「詳しくは、帰ってから」
 そう言って、片手にバッグを持って、空いている方は私の手を取る。
 ドキッとして、何も言えなくなる。

 手をつなぐのは、もう何回目だろう。未だに、心臓がうるさい。
 須藤君の手は、相変わらず大きくてあったかい。安心する。

 だから、きっと大丈夫。
 自分に言い聞かせて、不安な気持ちを飲み込んだ。



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