喉元の熱~℃~
取引先から直帰した僕は、今にも転びそうになりながら慌てて普段着に着替え、今日着ていくと決めていたジャケットを掴み、家をあとにした。

「やば!あと15分しかないっ!」

右手のスマホで時間を確認し、帰宅してきた時より速度を上げて走り出した。
バーで知り合った飲み仲間である彼女と、二人だけで飲む約束をしていたからだ。

彼女とは、同僚と飲みに行った時に知り合った。
その付き合いももう半年になるが、二人きりで飲むのは一度もなかった。
いつも5~6人の仲間で好きな酒の話やらアプリゲームの話で騒いで飲んでいたから。

彼女に好意のあった僕は、二人で飲みたいと思っていたし、そんな機会があるなら気持ちを伝えたいとも思っていた。

けど、ずっと彼女を誘えずにいたのは、彼女が飲む時にいつも口にする言葉が引っ掛かっていたからだ。
< 1 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop