偽婚約者の恋心~恋人のフリが本気で溺愛されています~

そのお客様というのが、ベリーヒルズビレッジ内にオフィスを構える藤原コーポレーションの社長の息子だ。顔は普通レベルだが、甘やかされて育ったであろうと思われる自己中心的な言動と、運動せずに好きな物だけ食べてきたんだろうと思わせるぽっちゃり体型。一応肩書きは副社長だが、見た目はいかにもわがまま坊ちゃんという感じの26才。いくらセレブでも、この人と合コンをセッティングしたら、先輩達怒り狂うだろうなぁ、と思った。

副社長のくせに自ら来店しては、

「いつも出張の手配ありがとう!お礼にごちそうしたいんだけど!」

と言って、隙あらば私の手を握ろうとする。
私はさっとテーブルの下に手を隠し、笑顔で、

「仕事をさせて頂いてるだけですので、気になさらないで下さい。」

と、かわしていたが、最近は様子が変わり、勤務中にもかかわらず、

「好きです!」

「付き合って下さい!」

と、交際を申し込んでくるようになった。

「勤務中ですので、そういうことはおっしゃらないで下さい。」

「お付き合いしてる方がいますので、申し訳ありませんが、藤原様のお気持ちには応えられません。」

と、仕事はするが、突き放すようにしている。


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