偽婚約者の恋心～恋人のフリが本気で溺愛されています～

「君は僕の物っていう印みたいなものだから。男よけだと思って常に着けていて欲しい。」

さらに、蓮さんの一言に顔が緩む。本格的に婚約者を演じてくれるようで頼もしい。こんな素敵な人が、嘘でも婚約者なんて嬉しさが込み上げる。

「はい。分かりました。藤原さんの件が解決したらお返しするか、お支払いします。ありがとうございます。」

「ほんとに気にしなくていいのに。それじゃ、デート開始だ！どこか行きたいところある？」

「私、デートも初めてで思い浮かばなくて。」

「二人でいればお茶するだけでもデートだからね。何でもいいんだよ。」

「じゃあお言葉に甘えて。私1ヶ月前にこのヒルズビレッジに勤め始めたので、ここのことよく知らなくて。色々見て回りたいです。」

「いいね。案内するよ。」

彼の手がすっと私の手に伸びてきた。私は咄嗟に自分の手を引っ込めてしまった。
恋愛初心者にとっては、手を繋ぐのにも勇気がいる。