偽婚約者の恋心~恋人のフリが本気で溺愛されています~
慣れた手つきでドアを開けると

「どうぞ」

と私を先に部屋に入れる。

こんな時でもレディファースト。

私は広い玄関で振り返り、躊躇しながら、

「あの、まだ状況を呑み込めてないのですが…。」

「ああ、そうだったね。とりあえず上がって。中で話そう。」

中に入ると、壁一面の大きな窓から、ベリーヒルズビレッジが見渡せる。40畳はあるだろうリビングに、大きなソファと大画面のテレビ。
アイランド型のキッチンにカウンターチェアが並んでいる。とてもきれいでモデルハウスといった感じで生活感がない。

「ここは、俺が一人で住んでる。とりあえず今日はここにいて。コンシェルジュに必要な物は頼んであるから、後で受け取って。足りない物があればコンシェルジュに言えば届けてくれるから。」

「悪い、もう出ないと。」
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