偽婚約者の恋心~恋人のフリが本気で溺愛されています~
「これしか制服ないのか?」

ホテルの従業員専用の部屋で、権藤は文句を言いながらベルボーイの制服に着替えた。

「申し訳ありません。今はこれしかご用意できなかったもので。」

秘書が丁寧に謝る。

本物のベルボーイが、

「サービスワゴンの用意が出来ました。」

と、届けに来た。これも、権藤が指示していたものだ。権藤が受け取る。


「あれから動きは何かあったか?」

と、俺は秘書に聞く。秘書や部下達にモニターのチェックや動きがあればすぐに分かるように、505号室の隣室に待機させているからだ。

「今のところ特に動きはありません。副社長、これも念の為にお持ち下さい。」

と言って、俺に505号室のスペアキーを差し出した。俺は、

「さすがだな。」

と言って受け取り、ズボンの左のポケットに入れると、俺達は、従業員専用の部屋を出た。


権藤はサービスワゴンを押し、俺と共にエレベーターへ乗り込んだ。

ポーン

50階に着いた。
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