嘘吐きな王子様は苦くて甘い
バーベキューも、プールも、花火も、雪遊びも、ただのお昼寝も。

旭君と一緒なら、なんだって楽しかった。

そりゃあ意地悪ばっかりで大っ嫌い!って思ったこともたくさんあるけど。

最後に笑って「ひまりちゃん」って。

そう名前を呼ばれたら、嫌な気持ちなんて何もかも吹っ飛んでいっちゃう。

小さな頃は分からなかったけど、今なら分かる。

この気持ちが、旭君だけに感じるこのドキドキが、大好きって気持ちなんだって。

私大倉ひまりは、石原旭君のことが大好きなのです。








もうすぐ七月、夏服の真っ白なセーラー服を私はとても可愛いと思ってるけど、皆はダサいダサいって溜息を吐いてる。

「ひま、おはよー」

「おはよう、菫ちゃん!」

「おっはよー、ひまり」

「あ、風夏ちゃんおはよう!」

「ひまりー、今日もかーわいいっ」

「きゃー、風夏ちゃん暑いよぉ」

「アハハ」

同じクラスで仲良しの遠藤菫(エンドウスミレ)ちゃんと小浜風夏(コハマフウカ)ちゃん。

菫ちゃんとは中学の時からで、風夏ちゃんとは高校に入ってから知り合った。

菫ちゃんは頼りになるお姉さんタイプ、風夏ちゃんは運動が得意で明るい人気者。二人とも優しくて楽しくて、大好きなお友達です。

「あ、旭…石原君またねっ」

歩いてる途中に二人に会ったから、旭君は私から離れてスタスタと歩いて行ってしまった。慌てて声をかけたけど、反応は何もない。

「今日も仲良く登校?ヒューヒュー」

風夏ちゃんがニヤニヤしながら私を見る。

「ち、違うよ!家が隣だから偶然…っ」

「とか言って本当は…?」

「げ、玄関前でこっそり待ってました。旭君が出てくるまで」

熱くなる顔を隠したくて、俯きながら口にした。

「やーん!ひまりってホント可愛いっ」

「風夏、あんまからかわないの」

「からかってるんじゃないよー、ひまりがあんまり可愛いからさ。あ、声かけない方がよかった?」

「ううんっ、旭君どうせ学校の近くになったら離れてっちゃうから」

「えー、それ酷くない?」

「酷くないよ!旭君は優しいもん」

「私には全然そうは見えないなぁ」

風夏ちゃんは口を尖らせて、私はそれを見て笑った。
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