黒翼の淡恋
フォルトに手を引かれ、ティファは力なく歩いていた。


_シリウス皇子、怒ってた。やっぱり迷惑だったんだ。



「__ファ。ティファ?」


フォルトに何度も名前を呼ばれていた事にようやく気が付く。


「あ、はい・・」


「何故、中庭に行こうと思ったのですか」


「え・・だって・・シリウス皇子が困っているのを助けたかった。
それに・・恋人さんたちも・・私がいて迷惑だったろうから・・謝りたかった」


「シリウス様の部屋を出てどうするつもりですか?ちゃんとそこまで考えて発言しているんでしょうね?」


「あ・・・はい・・また・・牢屋にでも行こうかと思って」


ぴたり。


フォルトは足を止めた。

笑いを堪えている様だ。震えている。


「フォルト、さん?」


「ぷ・・くく・・牢屋って・・自ら好んで牢屋に行く者なんてこの世に居ませんよ」


「だ、だって・・他にないし・・二階から逃げようとしたのに・・助けてくれた・・し」


そう言った瞬間に

ぶわっ。

と涙があふれた。




_嬉しかったんだもん。

手当してくれて、看病してくれて、頭撫でてくれて

嬉しかったんだもん・・。

もう何処にも行きたくないと思ったんだもん。


「ティファ・・」

「恩返し・・したかったんだ・・もん」
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