黒翼の淡恋
「でも、やっぱりだめです!」


とティファが拒んだ。


「私がもし、記憶がよみがえっちゃったら・・」


「急にどうした?」


不安で手が震えるのをぐっと堪えた。


「もし・・二人の敵になっちゃったら・・・襲い掛かってしまったら」


「・・・」


「嫌だ・・そんなの・・嫌・・」


_ここから出たくない。怖い。何が起こるかわからないなんて。



「お前がもしそうなったとしても俺がお前に負ける訳もない。
舐めるな」


「そんなの・・隙をついたら」


ドクン


シリウスはティファから受けた平手打ちを思い出した。


「隙すらも見せないし、あったとしても攻撃は交わせる。
それに、敵になるとは限らないだろ」


「で、でも・・」


「いいから、俺を信じろ」


「シリウス皇子」


「お前は俺の言うことを聞いていればいい」


まっすぐに視線を向けシリウスはそう言った。
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