黒翼の淡恋
その日の夜はずっと慌ただしく、兵士は松明を焚きながら近くの捜索に乗り出していた。

むろん、シリウスも寝ていない。

酔いの冷めたフォルトとセシルも一緒だ。


「まさかこんな場所でいきなり襲ってくるなんて」


とフォルトは頭を抱えている。


「暗殺は久しぶりだな。ずっと俺をつけ狙っていたのかもしれない」


「兄上を?」


「一か月前の討伐の影響かもしれないな。賊を討伐しただろ」


冷静な様子のシリウスだ。

その横でティファは毛布を被りながら見つめていた。


「ティファ、お前は気にせず寝ていいんだぞ」


「・・・眠れません」


この状況で眠れるわけもなかった。


「そういえば、お前から話があるんだったな。すっかり聞きそびれてしまった」


ドキン


ティファは思わず首を横に振った。


「・・今はいいです」


「・・そうか」



ジッと見つめられ、何か見透かそうとしているシリウスだったが、ティファは顔を背けた。

不安が募る。


_今は無理だ。シリウス皇子は殺されそうになったんだもん。仇なんて言葉だしたら勘違いされる。

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