独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

「結婚するんだ。何事も早い方がいい」

 そう言われてしまうと、つい憎まれ口をききたくなる。

「まだ結婚するとは言っていません」

 顔を背け、聞き入れない態度を示す。

「俺が寝ていると、そっと顔を近づけて、頬に愛らしいキスをしてくれたじゃないか」

 思いもよらない告白に、目を剥く。

「起きていらしたんですか?」

「数回に一回くらいは」

 夜中に目が覚めたとき、こっそり頬にキスをして、大好きとか、愛していますとか、恥ずかしい言葉を散々口にしたのに。
 その上、もっと近くに海斗さんを感じたいですという大胆発言まで、こっそりしているというのに。

 起きているのなら、もっと早く教えてほしかった。

 新しい辱めを受け、ますます頬をむくれさせる。
 それなのに、めげない海斗さんは色気漂う声で言う。

「ほら。もう一度、愛し合おう」

「どうして、そうなるんですか!」

「由莉奈が可愛いから」

 腕を回され、甘いキスをする。

 石垣島の一夜も、父への挨拶のときも、式典もそう。海斗さんは自分の思うまま、強引に話を進めていってしまう。
 その度に戸惑っているのに、海斗さんに深く惹かれている私は、甘美な罠に囚われ抜け出せそうにない。

fin.
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