独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

 細心の注意を払い、平坦な声で質問をする。

「調べたんですか?」

「なにを」

「私が働いている職場を」

 海斗さんは眉根を寄せ、「帰ってこないから心配した。心配くらいさせてほしい」とこぼす。

「でもあのお店って、ご存じなかったですよね?」

 ため息を吐いた海斗さんは自身の頭をかき回し、不満を口にする。

「そうだね。知らなかった。だから迎えに行きたくても行けなかった。それでもあまりに遅いから、由莉奈の自宅に電話をしてお母さんに職場を教わったよ」

「お母さんに……。では、興信所を使って調べたわけでは……。私の職場が、ご自身の妻に相応しいかどうか」

 揺れる眼差しを向けると、大きく見開いた瞳に囚われる。

「なにを言っているんだ」

 ゆっくり頭を振る海斗さんに、胸に引っかかっている思いをぶつける。

「受け入れられない仕事をしている私は、婚約者には認められないから」

 それなのにどうして、心配する素振りをして、お店にまで迎えに来るの?
 そして当たり前のように『由莉奈の婚約者です』だなんて、どうして言えるの?
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