政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

つい妄想が楽しくなり、どんどんヒートアップしてくる。菜摘には未来永劫、縁のない豪邸。理仁は呆れているだろうが、それこそが狙いだ。
夢物語を語り尽くし、ようやく口を止めた。


「菜摘さん、おもしろいね」
「はい?」


理仁が楽しそうに笑って肩を震わせる。
おもしろいと言われるのは想定外だ。


「そのくらいのわがままならかわいいものだ」
「……かわいい?」


あんなに贅沢な夢を並べたのに。いったい彼は、普段どんな要望を叶えてきたというのか。やはり住む世界が違うとしか言いようがない。


「あとはなにかない?」
「えっ、あ、えっと……」
「馬車でも用意する? それともジェット機?」



理仁は身を乗り出して、屈託のない笑みを浮かべた。

それからというもの、理仁は忘れた頃に農園にやって来てはイチゴの収穫を手伝ったり、菜摘を食事に誘ったりした。
なにかと理由をつけて誘いを断ってきたが、理仁はとうとう農園の存続という大きな餌をぶら提げて、菜摘の前に現れたのだ。絶対的な自信をもって――。

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