紅に染まる〜Lies or truth〜
・・・・・・
・・・







『愛ね?大きくなったら一平のお嫁さんになるの』


『楽しみにしてるよ』


『うん』







・・・
・・・・・・



懐かしい夢を見ていた
穏やかで温かな夢

いつも笑顔で

いつも愛に溢れていた




・・・
・・・・・・






もう触れられないかもしれない温もりのような気がして

温かさを求めるようにすり寄った


「愛」


「ん?」


ボヤけた視界がクリアになると
心配そうな顔をした兄がいた


「大丈夫か?」


「夢かと思った」


「夢?」


「ううん、なんでもない」


泣きすぎたのか頭に鈍痛がする
瞼が重いし涙が流れた頬が突っ張るから
顔も酷いことになっているだろう

あの後の記憶が曖昧で
倒れたに違いないと

そのままのワンピースを見て
ため息を吐いた


「颯は?」


「ここには居ねぇ」


「一平もう帰って良いよ、颯呼ぶから」


「あ?」


「あの女の人待ってるでしょ、帰って」


「あれは、置いてきたから待ってねぇ、それに・・・愛より優先することなんて何もねぇ」


徐々に低くなる兄の声は
明らかに苛立ちを含んでいて

同じように私にも苛立ちが生まれる


「嘘!」


「あ?」


「私より優先してたじゃない、あの女の腰を抱いて一平って呼ばせてた!
組長に呼び出されて出かけたくせに
私がマンションに居ない事にも気づいてないっ
もしあの場所で会わなければあの女を抱いたんでしょっ」



怒りに任せて一気に吐き出した



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