紅に染まる〜Lies or truth〜
迷道


一平はズルい

不都合な状況も

不自由な生活も


その都度全て含めて納得してきたのに


簡単に要塞の壁を取っ払おうとする


「当たり前を普通に味あわせてやりてぇ」


「・・・」


間近で見上げた一平の顔は
何か決意を固めたようで
いつもの甘い雰囲気が消えていた


「お腹空いたか?」


「あ〜、うん」


じゃあ、と天井さんへ電話をかけ始めた一平


短い電話が終わると


「天井と颯は連れて行く」


これからの話をした


「バトラーと護衛は親父に任せた」


既に終わった話と締めくくった


「着替えるか?」


「うん」


クローゼットで部屋着に着替える

一平はバルコニーで煙草を吸っていた


「悪りぃ」


近付く私を見ながら携帯用灰皿へ煙草を押し込んだ


「吸ってて良いのに」


そう言ってソファの隣に座る


「愛が嫌がることはしたくねぇ」


一平はクスッと笑うと肩を抱いた


私のお気に入りのルーフバルコニー


一平のマンションへ移るということは
この景色も手放すということになる

大澤組本家からほど近い場所にあるタワーマンションは一般人も入居中だから警備も一般的なもの

一平の腕の中をすり抜けて
ソファスペースから広い空間へと出た
手摺りに寄りかかって視線を動かせば

敷地の中にある木立の陰に何人も護衛が立っているのが見えた









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