紅に染まる〜Lies or truth〜
意識

ギャル変装に履きなれないピンヒール

ショッピングモールの広さに脚全体が悲鳴を上げていた


「ローファーとスニーカーにする」


足元を覗きながら出した声に
直ぐ反応した巧


「次の変装はギャル以外にしろよ」


クスクス笑う巧をひと睨みして
隣に座る尋を見上げた


「尋〜、巧が意地悪する」


助けてと眉を下げると
同じように尋の眉が下がった


「巧、イジメんな」


頭を撫でてくれる尋


「ブッ、え?は?俺?」


また吹き出した巧は
海輝と圭介に同意を求めるように
顔を背けた



この二人と一緒にいると
高校三年生の自分に会える

南の街には私を‘田嶋愛’と知る人は殆どいなくて

消えかけていた背中の羽根を
広げても良いよと思い出させてくれる

くだらないお喋りに耳を傾けてると
いつもより笑っていることに気づく


自分探しの二週間

全く変わらない気がしていたのに

四人と一緒にいるだけでわかったこと・・・


一平の言う自由を本当に望むのか・・・


窓の外を眺め続ける私の肩に
尋の手が乗せられた


「何考えてる?」


「・・・色々」
 

「頭で考えても答えは出ねぇ」


尋の言おうとしていることは理解できる

でも・・・
この案件が終われば

西の街に戻って引っ越しをすることになっている


・・・時間がない


焦る私の頭をゆっくり撫でた尋は


「二週間もある」


低い声で囁いた

ただそれだけで

たった二週間が長い気がした
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