紅に染まる〜Lies or truth〜
後片付け




西の街へ戻ってからは
高校の通信制のカリキュラムを進めながら

裏の仕事も精力的にこなしていた


全ては近い未来の地固めのため


その中で




(愛様、組長が来店されました)



老舗のジュエリーショップの社長から電話が入ったのは暑さが緩んだ頃だった



「どんなの?」

(三連トップのダイヤネックレスです)

「じゃあ」と


ダイヤモンド三粒の内二粒に発信機とマイクを仕掛けることにした


秘密裏に行われることは
こういったジュエリーから靴に至るまで多岐にわたる


ただ・・・
これらは何かあった時には捨てられる可能性を考えて


一番は身体に埋め込む


簡単なものは歯の詰め物の中にある
冷たいようだけれど首を落とさない限り探し出せる

龍神会のトップと呼ばれる地位にいる者には全て
身体に発信機が埋め込まれている


出番がないのが一番だけれど
不測の事態を避ける為の防衛物だと思っている


それを仕切るのもまた裏の仕事


組長の溺愛姫も本当は歯科に行くタイミングでと思っていたけれど


籠に閉じ込められたまま出てこないから
手段を考えあぐねていた


そして・・・
このネックレスが直ぐに役立つとは考えもしなかった



(陽菜ちゃんが拐われた)



焦った一平の声を電話越しに聞いてすぐ
タブレットを操作する




地図上に現れた点滅を眺め
カメラの映像から進路を推測する



「埠頭の第六倉庫・・・虎勢会絡みね」



直ぐに答えた私に電話の向こうで一平が息を飲んだ



「悪いけどネックレスに発信機入れさせて貰ってるから
組長にも説明しといて」

(わかった)



焦りが落ち着いた一平との電話を切ると
溺愛姫のマイク音声の録音マークが点灯していることを確認した



それにしても



龍神会の橙美さんとデパートに出かけた溺愛姫



桧垣さんの運転で・・・


「チッ」


護衛すらまともに出来ない三ノ組を捻り潰したい気分が持ち上がる



「使えない」



手緩い三ノ組の動きを見ながら
一平からの連絡を待った






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