紅に染まる〜Lies or truth〜


ピンポーン


突然鳴り響いたチャイムの音に
二人を包んでいた負の感情が消えた


「もう来たか」


横抱きの私をソファに下ろすと
入り口へと消えた兄

『もう‥』と口にしたからには
訪問は想定内

だとしたら・・・

土曜日の朝からホテルのスウィートルームを訪問する馬鹿は


「おっはよ〜」


コイツしかいない


「朝ごはんの途中っすか」


ちぎれんばかりに振る尻尾が見える颯


「あぁ、ちょっとな」


抱きしめ合って脱線してたって言ったら驚くだろうか?

意地悪が顔を出す前にと
立ち上がってテーブルに戻った


「今日も良い天気」

お前は主婦か


「もうすぐ12月とは思えない暖かさっす」


お天気お兄さんだな


「こんな日は外歩きも良いかも」


窓に張り付いて地上の風景と空を交互に見る颯

窓から入る柔らかな日差しが
シルバーグレーの髪を綺麗に反射させる

よくよく考えたら私の周りって
イケメン揃いな気がする

極道って顔審査あり?

そんなどうでも良いことを考えながら
コーヒーを飲んでいると


「気に入ったか」


目の前に座る兄の目が一瞬鋭く細められた


「なにが?」


「颯」


「くだらない」


ヤキモチか・・・
独占欲か・・・

どちらにしても
関わらせたのは兄


「そう思うのなら・・・」
目の前で殺してやる!そう思った
その殺気を読み取る兄は


「悪かった」


今度は頭を下げた

どちらにしてもくだらないけれど
兄との時間はもう終了だ


























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