紅に染まる〜Lies or truth〜


「寝よう」


敢えて寝心地の悪い仕事部屋のベッドに横になった

鍵も三重ロックもかけたけれど
安心して眠れない気がする

携帯の電源を切るとゆっくり目を閉じた









ピーピーピー


微かな電子音に起こされて
のっそり起き上がると


三番目のモニターに赤髪が映し出されていた


・・・リマインダー


思い出したように飛び起きると
椅子に座るのももどかしいほどに
キーボードを叩いた


薄暗い店内の狭いブースの中
リクライニングした椅子に
背中を預けるその男をジッと見つめる


トン、トン・・・と
自分の胸から聞こえる鼓動が
少しずつ大きくなるのが分かり


深呼吸しながら手を当てた


店内のカメラを操作しては履歴を消す

そんなことを繰り返し


気がつけば毛穴が見えるほど
拡大していた画像

南にいる裏の二人も動かしているから
もうすぐ南の潜入も終わるはず


自分が終わらせる事案を思い
画面を切り替えようとマウスを握った刹那

拡大された紅太が




こちらを見て笑った




「・・・っ」



ただ薄く笑っただけ
口元が三日月型に動いただけ

それだけなのに



また懐かしい感じがした



その感情の名前もわからず


ただ、ただ
また閉じてしまった紅太の目を見つめていた




















< 62 / 227 >

この作品をシェア

pagetop