真夜中だけの、秘密のキス
アイスコーヒーとケーキを部屋に運んだら、ベッドに座った久木君が、何かを熱心に読んでいた。
彼の手の中にあるのは、まだ開封していなかった、見知らぬ人からの手紙。
久木君、私宛の手紙を勝手に読んでる?
「何て書いてあったの?」
サイドテーブルにグラスを並べ、彼の手元を覗き込む。
「『最近、スカートちょっと短くない?』だって」
「えっ、うそ。普通だと思うけどな。……他には?」
「『色んな男に笑顔を振りまきすぎ。警戒心を持て』」
「警戒心? ほんとにそんなことが書いてあるの?」
笑顔を振りまいているとか、そんなつもりはないのに、ダメ出しばかりで不安になってきた。
気持ちを切り替えて、彼に笑顔を向ける。
「久木君。よかったら、ケーキも食べる?」
渡しそびれた、久木君の好きなチョコレートケーキ。今でも好きだといいな。
「俺、手紙読んでるから、玲香が食べさせて」
ちら、とこちらへ視線を送った久木君は、さらりと妙なことを言い出した。
「えっ? でも」
男の子に食べさせるなんて、したことないよ。
どうしよう。緊張する。