脆い記憶
どれぐらいの時間を二人でこうしていたのだろう

私たちの上にあった月はいつのまにか消えて
辺りが少し明るくなっていた


「晴・・・起きて?」

いつの間にか抱き合いながら二人で眠ってしまっていたようだ

優しく微笑むこうちゃんが私の顔を覗いてる

「さ、晴はそろそろ帰ろうか」

「ああ本当だね。もう朝になっちゃう。電車もう走ってるかな・・・」

部屋の中の時計をきょろきょろ探す

「大丈夫、玄関を出れば戻れるから」

私の顔を両手で包みながら微笑んでいる

「こうちゃん、手が冷たい。冷えちゃった?」

ううん。と首を横に振りながら笑って「大丈夫。晴、愛してるよ」と突然言うもんだから私は驚くと言うよりぽかんとしてしまった

「な、なに?どうしたの?やめてよ」

恥ずかしくて気の利いた言葉を返せない

なんてタイミングで告白してくるんだこの人は!
まだ起きたてで寝ぼけてるのに!

「晴は?俺のこと好き?」

意地悪な顔をしながらこうちゃんが顔を近づけてくる

朝からお盛んな!と身体を押し返そうとするけど
こうちゃんの体はぴくともしない

私の両手を掴んで唇を押しつけられた

深い深い息ができないようなキス
ゆっくりゆっくりと体が押される

ガタン。と私の背中が玄関のドアにぶつかった

「・・・こうちゃん、どうしたの?」

「晴に俺のことを思い出して欲しい。そうずっと願ってたけど、それは俺のわがままやって言い聞かせてた。でも昨日晴に再会してその気持ちが抑えられへんくなった」

「うん。こうちゃんのおかげで私の大切な記憶は次々に帰ってきたんだよ」

「ほんまによかった。晴、思い出してくれてありがとうね」

また唇が合わさる

何度も何度もお互いの存在を確かめるように
何度も重ねた


「こうちゃん、やっぱり体が冷たい。寒いの?」

こうちゃんの体がさっきよりもどんどん冷たくなっている事に気づいた

「大丈夫やってば。心配せんと晴は帰り!な?」
クシャクシャと私の髪を撫でてハハっと笑ってる

こうちゃんが玄関をゆっくりと開ける

朝焼けにしては眩しすぎるぐらいに白く明るく光っている

「じゃあ、またね・・・また会えるよね?」

「うん。ちゃんといつか会えるから」

ニッと笑ったこうちゃんは私の髪を耳にかけて
「ピアス、やっぱ似合ってるな。それを俺やと思って晴の側に置いておいてな」と耳元で囁いた

そのままグッと私の耳に近づいて私のピアスにキスをする音がした

「晴、俺は幸せや。ありがとう。愛してる。晴も自分の幸せのためにこれからは生きていって」
耳のすぐ側で優しい声が囁いた


ゾク・・・
何か胸騒ぎがする


「じゃ・・・」と手を振ってドアを閉めようとするこうちゃん


待って
どうしてそんな強引にドアを閉めようとするの?


「ちょ、ちょっと待ってこうちゃん!ねぇ!」


ドアの向こうのこうちゃんはニーッと笑ったままでドアを閉めるをやめてくれない


「こうちゃん!ちょっと待って!」


どうして待ってくれないの?


こうちゃん
やっぱりまだ離れたくない!

このまま別れたら
本当にもう二度と会えなくなる気がする


ねぇ・・・!
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