黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 俺が前に立っていれば、彼を死なせにすんだかもしれない。
 

 その後悔と葛藤は今でも薄れることはなかった。

 ひとりアスファルトを見つめていると、「伊尾くん」と声をかけられた。

 顔を上げ、そこにいる人物を見て、小さく息を吐きだし会釈をする。

「今年もまた来てくれたの? 本当に律儀ね」

 ショートカットの細身の女性は、大崎さんの妻の梨花さんだ。
 彼女と手を繋いでいた健太が、俺を見て「いおさんだーっ!」とかけてくる。

「健太、大きくなったな」

 片手で抱き上げてやると、健太はきゃっきゃと声を上げて笑った。

 健太は大崎さんの忘れ形見だ。

 彼が亡くなったときは、まだならないよちよち歩きをはじめたばかりの赤ん坊だったのに。
 腕に抱えた重みに、五年という時間の長さを実感する。

「元気にしてるか?」
「げんきだよ! ぼくね、もうようちえんのねんちょうさんなんだよ」

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