黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 呉林くんに連れ去られるときに暴れたから、そのときに足をくじいてしまったのかもしれない。

 これでは、普通に歩くのもむずかしそうだ。
 
 なんとか右足に体重をかけないようにして窓に近づき外を見ると、この部屋が二階にあるのがわかった。
 
 建物のすぐ横は角度ののきつい斜面になっていて、その先には川が流れている。
 
 手を縛る縄をどうにかして外せば窓は開けられそうだけど、足を痛めている上にこの高さでは、ここから逃げるのは無理だろう。
 
 はぁーっと息を吐きだし、その場にしゃがみ込む。
 


 昨日、呉林くんに襟元を掴み上げられ、必死にもがいているうちに苦しくて気を失った。それが日曜の午後だった。
 
 それからの記憶がまったくない。
 
 少なくとも一晩はたっているだろう。
 もしかしたら、麻酔でも注射されたのかもしれない。
 
< 143 / 219 >

この作品をシェア

pagetop