ビビディ バビディ ブー! 幸せになーれ!〜この愛があなたに届きますように~
✳✳✳

「やりすぎちまったな…」

48階から下降していくエレベーターに力なくよりかかりながらでてくるのはため息ばかりだ。

こんなはずではなかったのだ。

予定ではこんなに強引にことを進めるつもりはなかったのだ。

「くそっ!」

背にしていた壁に拳を叩きつけて、微かに揺れたエレベーターに停止するんじゃないかとハッとして深呼吸して冷静さを取り戻す。

「さて、どうするかな…」

顎に手をあて朋葉をどうやって頷かせるか思案する。

俺の辞書には ”偶然” などという言葉は存在しない。
どんな些細な出会いも出来事も、意味を持たないことなどない。
全てが必然で、物事は原因結果。
自分で今起こす行動が未来を作リ上げていくのだ。

そりゃもちろん今のように冷静さを欠いて、感情のままに動き失敗しちまうこともある。

でも目指すゴールはひとつなのだ。
そこへたどりつくまでの道のりが険しいものか平坦なのかの違いだけだ。

「絶対逃さねぇ」

ようやく見つけたんだ。
誰にも邪魔なんてさせない。朋葉は絶対に俺が手に入れる。

「まぁなるようになるさ、"ビビディバビディブー" か…。
覚悟しとけよ朋葉」

自然と口角があがり、笑いがこみ上げる。
仕事用ではない作らない自然体の自分をさらけだしているのはずいぶんと久しぶりだ。

「俺のこんな顔みたら相楽(さがら)の奴ぶったまげるだろうな」

いつも俺のそばで口煩く目を光らせている秘書の相楽匠(さがらたくみ)の顔が頭に浮かんだ。

ああそうだ、相楽に協力してもらおう。
どうするか思案していた考えがまとまり、携帯を取り出し相良にすぐさま指示をだす。

「よし、さぁまずは腹ごしらえだ」

1階に到着したエレベーターから降りると、俺は再びショッピングモールにあるコーヒーショップを目指して歩きだす。

彼女の好みを聞いてこなかったことを後悔しながら、好きなものを選べるように数点多めに飲み物とサンドイッチを購入して足早にもと来た道を引き返した。


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