誰にも教えてアゲナイ!
用意出来たって、あのねぇ……!



「しばらく百合子んちから学校通わせて、ね?」

「百合子さん、バッグとコート。私も今度、遊びに行っても良い?」

「えと、うん、いいけど…あっ、ちょっと…」

樹里ちゃんが玄関までバッグとコートを持ってきてくれて、バイバイと手を振る家族。

『ごちそうさま』も『お邪魔しました』も言えないままに、彼に連れ去られて、玄関の外へ。

外は雪がパラパラと降り始めていた。



「ちょっと、泊めるなんて許可してないしっ、駄目よっ」

「…分かってる。でも、今日だけ…今からじゃ、友達ん家行けないし…何もしないから、絶対」

彼は切なげな表情をしながら、空から舞い落ちる雪を眺める。

「何かしたら速攻追い出すからね、分かった?」

そんな彼を見ながら私はキツく言い放つ。

彼は優しく微笑み、「絶対守るよ」という約束の印に小指を出したので私は自分好みに小指を絡めた。

この行動は可愛いや。

可愛さにドキドキと胸が高鳴る。



「しょうがないなぁ…」



また流される。

でも、まぁ、いいか。

今日はクリスマスイブ、なんだし。



「親父はさ、スリランカから帰ると、紅茶の調合だか何とか言って会社に篭るんだよ…。

しかも、一ヶ月、酷い時は二ヶ月以上、家に帰って来ないし…。紅茶にハマって、馬鹿みたいにこだわってんだ」

「紅茶、か…」



だから、以前、彼は紅茶を嫌いと言ったのか。

嫌いというか、お父さん絡みの毛嫌いかな。



「でさ、母さんがいつもヒス起こすだろ、で、仲直りで子供が出来たり…最悪だよ、で、俺が家事任されるし…」
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