君は私の唯一の光

君の邪魔者 said寧々

「じゃあ、俺帰るっ!おっつかれ様〜♪」



洸夜は近頃、部活が終わってから、すぐに帰るようになった。理由は……彼女だろう。



治ったばかりの足を存分に動かし、軽やかに駆けていく。後ろ姿が、輝いて見える。



それが、とてつもなく悔しかった。







「じゃあなっ!」


今日も走って帰っていく。毎日毎日コレ。いい加減慣れなきゃいけないのに、辛い。





ピコン————


ん?メール?



『今日、駅前のケーキ屋さんで、ショートケーキとモンブラン、あと寧々の好きなやつ1つ、買ってきて。よろしく!』



お母さんからか。ケーキを買うって事は、なんか気に入らない事があったんだな。





家の最寄り駅について、ケーキ屋さんに着くと、洸夜が丁度店から出てきた。


えっ!?なんでいるの?って思ったけど、彼女へのお土産だって、すぐに分かった。


だって、洸夜が歩いていく先には、大きな市民病院。あの“乃々花”って人が、入院してる病院だ。




ケーキなんか忘れて、気づけば洸夜の後について行ってた。



「ストーカーじゃん、コレ。」



悪い事だと脳で理解してても、足は止まらなかった。


いつも周囲に鋭い洸夜も、浮かれているからか、私の存在に気づいていない。


そのまま、洸夜があの病室に入っていくのを見届けた。ドアの前に来ると、洸夜とあの人の弾んだ声が聞こえる。



「これ、駅前のケーキ屋のクッキー!」



「ケーキ屋さんで、クッキー買ったの?」



「ケーキよりクッキーの気分だったんだよ、今日は!」



「そういう時もあるよね〜。」





笑い合ってて、楽しそう。と、同時にため息が出る。洸夜が夢中になるのは、サッカーだけだと思ってたのに。


洸夜にとって、サッカーはかけがえのないものだって、それ以上になるものはないだろうって、ずっと思ってた。サッカーの話をする時は、この上なくキラキラしてるし、プレイしてる時なんて、言葉じゃ表せないくらいかっこいい。そんな姿を、5年間見てきたから。



みんなから、“サッカーバカ”って言われても違和感なんて、微塵(みじん)もない。





でも、もう違う。サッカーと恋愛。2つも大切なものができた。いつかは、当たり前だっただろう。だけど、それが“今”なんて、誰が想像できたって言うの?


学園内の女子のほとんどが、洸夜に気がある中で大半がアピールしまくった結果、誰1人として叶うことはなかった。






羨ましい…………その言葉じゃ足りないくらい、羨ましい。




“嫉妬”した自分が、とてつもなく(みにく)くて、そこをあとにした。もう、なんでもいいや。





家に帰ってからも、あのドアの向こうにいた洸夜が、私からすごく遠くなってしまった気がする。早く…………この想いが消えますように。






ただね、女の嫉妬って、最高に怖いんだよ。
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