君は私の唯一の光
その後、同じような言い争いが続いた。





「洸夜くんとはやく別れてっ!」




「イヤ!!」




「っ……、こいつ————」





1人の子が手を振り上げた。



やばい……当たる。誰か助けて————





なんていうか弱くかわいい女の子では私はないので………





避けて、当たるのを防いだ。私に当たると思われた手は、校舎にぶつかり………





「い、いった………」





ジーンと痺れるのか、腕を押さえてしゃがみ込む女の子と、その子を支える2人。




その女の子の姿が、初めて倒れた時の私と重なった。





「………」





どうしよう……私のせいだ。震えが、止まらない。





「あんたのせいで、奈子(なこ)が痛がってるじゃない!」






私がぶたれてれば、この人は痛みなんてなかった……。





「これ、洸夜くんに言いつけるから。あんたのせいで、奈子が怪我したって。」





………っ————





終わりだ……。





人を傷つけるような彼女、優しい洸夜だって嫌いになる。これを、もし洸夜に知られたら、私は洸夜の彼女でいられなくなる。洸夜に嫌われてしまう……。





「それ、違うんじゃねーの?」





校舎の影から、男の人が歩いてくる。その人は……





「竹島くん?」





あくびをしながら、迷路の入り口で会った竹島くんが来ていた。





「乃々花さん、さっきぶり。」




「は、はい。さっきぶり、ですね。」




「で、江口(えぐち)たちは乃々花さんとなにしてんの?」




「奈子が、この子に怪我させられたの。」




「ひっどいよね〜。」




故意に、怪我をさせたわけじゃない。そう言いたいのに、言葉に出ない。詰まるんだ、喉に。過去の自分と重なって。





「ふーん。乃々花さんが、ねぇ。」




竹島くんに目を向けられても、事実であるから、否定できない。





「でもさ、俺は江口たちの方がひどいと思うんだよねー。」





「はぁ!?なんでよ。私たちは被害者なのよ!?」





「乃々花さんに、洸夜と別れろって脅してたくせに。」





「……っ、その証拠はあるの!?ないでしょ!適当な言いがかりしないで!」






「あるけど?」





「「え?」」







さすがに、洸夜と別れることについての話を否定したのは、ムカついた。でも、それより奈子っていう子が傷ついたっていう事実の方が、私には大きい。





無言で、ポケットからスマホを取り出した竹島くん。それを操作して、私たちに見せた。






液晶画面には、私たちが言い争いをしているところや奈子さんが怪我をするまでが写っている。






「隠し撮りなんて、悪趣味よ!はやく消して!」




「江口たちみたいに、1人を数人でいじめてる方がどうかと思うけど。」





「うるさいっ!アタシたちは、洸夜くんのためにこいつに言ってたんだから!」





「洸夜のためなら祝福してやれよ。」






火がついた女の子と竹島くんの言い合いが始まった。





よかった……ちゃんと、私が悪いばかりじゃないって、言ってくれる人もいた。






「しかもさ、中田(なかた)の手は校舎にぶつかってないんだよね。ほら、これ。」






そう言って、再び見せてもらった画面には、確かに、手が当たらないまま痛がる、“中田”こと“奈子”さん。




さすがに否定できなかったのか、それ以上はなにも言わない。





「っ、もう行こ、2人とも。」





痺れを切らしたように、“中田奈子”さんは、他2人を連れてどこかに行ってしまった。




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