身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
「えっと……ダンナサンは、それでいいって。まあ、都内に出やすい立地だしね」
「店長の仕事のことも考えてくれてるんでしょうね。優し~」
「ふたり目ご懐妊のときは早めに教えてくださいよ、みんなでサポートしますからね」

私は照れて返す言葉に困るばかり。こうして祝福されると、修二との関係を公なものにするんだなあと実感する。最初に結婚を考えた三年前は、妊娠中だったし、私は離職のタイミングだったから、あまり「おめでとう」と言われなかった。祝われるのって嬉しいことなんだなと今更ながら感じる。

ふと気づくと、今日のブーケを作ってくれた佐富くんが端でふくれっ面でチューハイを飲んでいた。

「佐富くん、ブーケありがとうね。上手になったね。もう、任せても大丈夫じゃない」
「うっす」

反応が悪いなあ。すると、阿野さんが佐富くんの首根っこを捕まえて大声で言った。

「佐富くんは店長が取られちゃって悔しいんだよねえ。でも諦めな! 相手が悪いよ。イケメン弁護士だし、まりあちゃんの実の父親だし! 何より、店長はベタ惚れだし」
「うるさいっすねえ、阿野さん! 俺だって、あと一年もしたら消防士なんですよ! 弁護士に負けてないっつうの!」

ふたりとも最初の一杯でもう酔っちゃってるのかな。声もテンションも高い。うーん、仲裁すべきか……。

「店長! おめでとうございます!」

佐富くんがやけくそみたいな声で言った。

「悔しいですが、お祝いします!」
「ありがとう、嬉しい」

私は笑顔を見せた。変に気を遣うより、今は素直に笑った方がいい。その方が佐富くんに感謝を伝えられる気がした。
< 167 / 186 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop