身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
「あの、まりあちゃんのお父様、三月だけお迎えということでしたが、今後もお迎えがあるようでしたら保護者カードをお作りしたいと思っていまして」

保護者カードは首からさげるカードで園児の名前と保護者の名前が記載されている。個人情報の観点から外に出すことはないけれど、園内での身分証明書の意味合いがある。園側としては保護者カードを持つ人間に園児を引き渡したいのだ。

断ろうかと思った。だって、両親が帰ってくれば修二の手を借りることはなくなるもの。
だけど、私は自然に答えていた。

「あ、じゃあ一応作ってください」

修二がお迎えに来るのはあと一週間弱。だけど、もし両親や私に何かあったとき、まりあを保護できるのは修二だけなのだ。
そう、すべてはまりあのため。それでいい。

職場に着くと今日は講義が休みの佐富くんがバイトに入ってくれていた。阿野さんもいるので三人態勢だ。ふたりが接客してくれていると、私は早い時間から事務作業ができて助かるのだ。

「店長」

開店準備の合間、佐富くんが声をかけてきた。つい昨日、修二とまりあの姿を見て、不機嫌そうにしていた佐富くんが一夜明けたらいつもの爽やか青年に戻っている。よかった。なにか怒らせちゃったかと思った。
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